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写真家・佐藤健寿氏インタビュー「そこに奇妙なものがあるから」旅の理由はそれだけで十分

民泊JOY初取材!写真家・佐藤健寿氏へのインタビュー

民泊JOYの編集部が、“イマ”気になって仕方がない人にお話を伺うインタビュー企画。
記念すべき第一回は“奇妙なもの”に魅せられて世界各地を巡り、数々の作品を生み出す写真家、佐藤健寿さんです。
最近ではクレイジージャーニー※TBS系列やタモリ倶楽部※テレビ朝日系列にも出演し注目を集めていますが、もともとは世界の奇妙な出来事を取り扱う情報メディア「X51.ORG」の運営者でした。
そんな佐藤さんがインターネットの世界から、カメラを手にリアルな世界へ飛び出した理由とは?レンズを通して見える奇妙なものの裏に潜む人間のドラマとは?そんな気になる事を直撃取材してきました!

佐藤健寿氏プロフィール

武蔵野美術大学卒業後、2002~2006年にかけてウェブサイト「X51.ORG」を運営。現在は世界各地の“奇妙なもの”を博物学的・美学的視点から撮影する写真家。
奇界遺産』『奇界遺産2』『THE ISLAND 軍艦島』『空飛ぶ円盤が墜落した町へ』『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』など数々の写真集・エッセイを出版。
その他、クレイジージャーニーやタモリ倶楽部などテレビ番組にも出演。

▼佐藤健寿氏の公式サイト

“奇妙なもの”が生み出す世界観、またそれがつくられた背景に強く惹かれる

――『奇界遺産』シリーズや『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』など、こうした不思議な世界観にフォーカスを当てて写真を撮り始めたきっかけとは何でしょうか?

美術大学を卒業後、アメリカへ留学したんです。そのときの課題でアメリカの州を撮影することになり、どこに行こうかとテーマを探していました。
そこでふと、僕が子どものときにテレビで見た「エリア51」のことを思い出したんです。もともと秘密軍事施設で、アメリカのUFO陰謀論も話題となったその場所が、今、どうなっているのか気になってネバダ州に行ってみました。ネバダ州は他にも、昔ゴールドラッシュがあった場所なので、ゴーストタウンなどがたくさんあったり。そこで廃墟やエリア51の写真を撮ったんですが、その景色が面白くて。
もともと奇妙なことが好きだったのもあり、UFOを作っていたといわれていた南米の秘密都市やチュパカブラ(吸血未確認生物)に興味を持ってチリへ行ったり、雪男って一体なんだったんだ?と思いヒマラヤへ行ったり。
そうこうしているうちに写真が溜まってきたので、作品にしました。

世界の奇妙な話題に特化したX51.ORGと転機

――2000年初頭佐藤さんが運営していたウェブサイトX51.ORG。当時はまだ珍しかった個人メディアですが全てご自身で運営されていたんですか?

そうです。専用線のサーバーを借りて、今だとあまり使わないと思うんですがapacheレベルで自分でいじってましたね。アクセスが多くなるな、と思ったらhttpd.confを自分で設定して記事のアクセス数に応じてmaxclientsを調整して・・・と全部。
そのころは旅に出て写真を撮りたいというよりも、とにかくネットの面白さにはまっていました。世界で起こっているいろんなことが同時に見られるということが新鮮だったし、それをクリック一つでできるということが衝撃で。

――当時はインターネットが広く流行り始めたころでしたね。

そうなんです。サイトも2003年前後のアクセスが凄かったですね。
今でこそアフィリエイトの言葉が一般的になっていますが、当時もサイト運営だけで生活していけるなという手ごたえはありました。個人サイトのランキングで上位に入ったり、アクセス数を集める記事の傾向も掴めるようになりました。
でもそれは結果としてついてきただけで、本来は仕事としてやるつもりはまったく無かったですけどね。ほとんど趣味でした。

――X51.ORGは世界の奇妙な出来事を中心に取り扱っていましたが、ネットですべて完結できるサイトの世界から、リアルな世界へと佐藤さんが動き出した理由とは何でしょうか?

もともと僕のサイトで扱っているような話は海外ニュースの中でもこぼれ話みたいな扱いのことだったんですけど、こういう記事がアクセスを集めると踏んだら今度は大手企業が参入してきたんです。いろんなメディアがニュースなどをウェブで取り上げ出して、このままいくと善かれ悪しかれ量の勝負になっていくなと思いました。
このままいくといずれ飽和すると思ったので、量でなく質というか、ネットの時代に「コピーできないものって何だろう」と思ったときに、本能的に自分で行くしかないという考えに辿り着きました。

――手段を変えるということですね。

はい。あともう一つの理由は、自分の作品を残したいと思ったことです。
僕は一応、美術大学を出ているので作品的な意味で考えたとき、サイトを10年つくり続けたとしても、ある日サーバーが壊れたらデータが消えてしまうこともありえるじゃないですか。
自分のつくっているものがただのデジタルデータでしかないと気づいたときに、形として自分のつくったものを残したいと思いました。
10年かけてつくってきたものが消えてしまったら、僕は“デジタルデータを生み続けていたよくわからない人生”になってしまうかなという恐怖感はありましたね。

”奇妙なもの”を求めて世界へ飛び出した写真家が生み出す作品

――『奇界遺産』や『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』など佐藤さんの作品を見ていると、UFOやUMAそのものではなく、それを取り巻く人や施設の狂気のようなものを感じます。これまでの作品を通して、佐藤さんが写真を撮りたいと感じるものの共通点は何でしょうか?

自分の中で共通しているのは、単純に「人間が考える奇妙なもの」「人間の変な想像・観念が創った場所」に惹かれるのかなと思っています。
エリア51も、何にもない場所なのにその地下にはUFOがあるって信じられていましたし。

――国によって神や王に対する敬意の表し方が全然違うのが興味深いですね。なかでもアジアはユーモアを交えて神が描かれていることが多いですが、このような違いはどこからくるのでしょうか?

信仰に対する距離感が違うと思うんです。
ミャンマーの寺社や仏像はユーモラスに見えたり、仏像にお金をペタペタと貼り付けたり、僕たちから見ると「これ大丈夫?」と思うことは多々あるんですが、それは日本における仏教の見え方からすると奇妙に見えるだけなんです。つまり「普通」の範疇が違う。
タイには地獄寺がありますが、ここは仏のセクションよりも地獄のセクションの方が広いんです。
その理由は多分、タイではお寺が身近な存在で、子どものころから気軽に足を運んだり若い人も友達と訪れたりしているんです。
公園とまではいかないけどカジュアルに行ける場所。日本みたいに厳かな感じでは全然ないです。
なので地獄寺は、子どもがテーマパークで遊ぶように地獄の怖さを知って、地獄に行かないためにもちゃんとしなければと学ぶ場所として地獄のセクションが広くなっているのかなって思っています。
そもそも国によって文化がまったく違うので、神や王に対する考え方も違うのは当たり前のことですね。

――寺社仏閣の色彩についても、アジアは原色やカラフルに彩られている印象に対し、西洋はシンプルで無機質な印象を受けますね。こういう違いは一神教や多神教などが関わってきたりするのでしょうか?

多神教の方がカラフルになりがちですね。偶像崇拝があるかないかによってすごく変わってきます。仏教にも違いがあって、日本は“大乗仏教”、タイの方は“小乗仏教”といってインドの影響が凄く強く出ているので基本的にカラフルだったりするんですよ。
インドの神様ってカラフルなんですが、その影響が凄くあって偶像というか、神様のキャラクター性が強い。あと中国では道教の影響が強いですね。
道教も基本的には多神教的というか、アニミズムとか精霊信仰にも似た不思議な宗教なんですが、偶像崇拝は盛んだし、現世利益的なんですよ。派手にすればするほど景気がよくなるみたいな感覚さえある。だから台湾とかでもド派手な寺が多かったりするわけです。

※アニミズム・・・物質・生物などに関わらず全てのものに霊が宿っているという信仰

――日本人から見たら「神様にそんなことを!?」と思うようなことでも、向こうの人にとっては普通のことなんですね。

日本のお寺が豪華に飾り立てると、“坊主丸儲け”的な批判を受けるじゃないですか。でも、台湾とかだと景気のいい場所に行ってお金をどんどん奉じることによってみんなが幸福になるっていうか。

――そういったものの並びで『奇界遺産2』では新宿のロボットレストランが出てきますね。佐藤さんから見ても他のスポット同様に奇妙で面白いものと捉えたのでしょうか?

誰がどう見ても奇妙だと思います(笑)。別に有名だから、という理由で本に入れないことはないです。
僕が本を出すときに心がけているのは自分が奇妙と感じたり好きなものをまとめて一つのパッケージにすること。
エリア51やイースター島が「世界の七不思議」みたいな括りで載っている本とか、中国の洞窟で暮らす人々とか、それぞれジャンル化して紹介されている本はたくさんあるんです。でも僕が好きなのはそれら全部。僕が気になることとか好きなことを一つのパッケージに入れたい。そのパッケージが何かというと「奇妙」という緩い共通項なんだと思います。

「もしかしたら自分にも起こりえたかもしれない並行世界」を感じる軍艦島

――今回新たに『THE ISLAND 軍艦島』の写真集を出されましたが、廃墟も“奇妙なもの”のつながりでしょうか?佐藤さんが廃墟に魅了される理由とは何でしょうか?

世の中の人が何に興味を持つのかは様々な理由があると思うんですが、個人的に思う廃墟の魅力って、その背景とか歴史のところだと思うんですよ。
景色としても素敵なんですが、そこまでに至った歴史。奇妙な景色ができあがるのは、だいたい奇妙な歴史があるんです。
一般的にはSF的な景色だったりセンチメンタル感があったりするから廃墟に興味を持つ人が多いのかもしれないですが。女性でも廃墟が好きな方は結構多いですね。

――個人的に廃墟には近未来感を感じます。

それもありますね。すぐ近い未来としてそういう景色がイメージできるというのは、ディストピア的な興味なのかなと。

――作品として光や雰囲気を演出をしているのではなく、実際の景色を見てもそう感じるものですか?

軍艦島は特に奇妙ですね。軍艦島は戦後につくられたんですが、日本で最初の鉄筋コンクリートマンションが建っています。
当時の日本の建築技術をかなり集めていて、狭い島の中にマンションが密集しているのって、東京とか日本の景色に通じるものがあるじゃないですか。
だからよけいに自分の暮らす街と重ねやすいというか。
特に日本は昔から自然災害も多いですから、文明とか街は常に右肩上がりで成長していくものではないということを実は無意識的に理解している。
だから「もしかしたらこうなっていたかもしれない」という並行世界を見るような憧憬もあるのかもしれないですね。
廃墟が好きな人は、若い女性もいれば中年層の男性などほんとに多様な人がいます。

――ご自身の興味としても、奇妙なものから廃墟へと昇華されていっているんでしょうか。

全然!自分では「廃墟」というジャンルに分けているわけでなく、同じ“奇妙なもの”です。もちろん、ただの廃墟だというものは「廃墟」のジャンルにはなるけど、共産党ホールみたいな場所は「廃墟」でもあるし「奇界遺産」に載せても全然おかしくない。自分としては明らかな線引きはしていないですね。

――『ISLAND 軍艦島』のなかで詩集のように散りばめられた言葉は、壁に書いてあった落書きから引用したものと知ってとても衝撃でした。あれは当時の島の住人が書いたものなんでしょうか?

当時島に住んでいた人に聞いたんですが、誰が書いたのかはわからないそうです。
今はもう壁には残ってないんですが、新聞社のアーカイブを見ていたら偶然目に留まったのがそれでした。
僕自身、これまで何度か軍艦島には足を運んでいたんですが、不思議な気持ちになるんですよ。でもこの詩を見たとき「これだ!」と自分の感覚を言い当てられた気がして。

世界を旅するなかで見えてきたこと、感じたこと

――佐藤さんはどれくらいのペースで旅をしているんでしょうか?

日本を拠点に、多いときは月2回海外へ行っています。1回の期間は7日~2週間くらいですね。移動半分、撮影半分という感じで、多いときは5,6ヶ所のエリアを移動しますが、場所によってまちまちです。

――それだけ移動していると、宿泊はどうしているんですか?

基本はホテルに泊まります。滞在する場所によってはゲストハウスや民泊みたいなところも利用しますよ。
でもホテルと聞いていたのに、民泊のような施設だったりAirbnbでも登録されていないような宿だったこともたまにありますけどね。

――宿泊先が少なかったり見つけづらいところはどうやって宿の予約をしているんでしょうか?

先月はインドの方、チベットのカシミールの方へ行ったんですが、そのときは日本から現地のコーディネーターに依頼して宿の手配をしてもらいました。

――今まで宿泊してきた施設で、ある意味スゴかった宿はありますか?

基本はどこでも寝られるので、寝られないほどひどい場所はなかったですね。でも宿は国やエリアによってほんとにピンきり。
エチオピアの山奥に行ったときは、日程表には「CAMP STAY」って書いてあるんですが、行ってみたらただの馬小屋のようなものがあるだけ。
下に藁が敷いあって、トタンのひさしのようなものと柱だけ。壁もなにもないので、ほぼ野宿みたいなことはありました。

――いろいろな国や地方を旅するなかで、危険な目にあったことはないのでしょうか?

今のところはないんです。犬に襲われたことは何回かあったり自分で事故してしまったこともあるんですが、人間にひどい目にあわされたことはありません。

――野犬も危険そうですが・・・。

野犬って縄張りがすごいから、よそ者はにおいでわかるみたいで。
フィリピンの小さい村に行ったときは、村に滞在しているときは平気だったのに、出て行こうとしたときは田んぼの向こう側に野良犬が群れをなしていて。
まるでナショナルジオグラフィックに出てくるような、ライオンがシマウマを今にも襲いかかりそうなシーンみたいになっていました。
で、さすがにやばいなと思って後ずさりしていたら現地のおばあちゃんがいて、おばあちゃんが野犬を追い払ってくれました。

――おばあちゃんすごいですね(笑)。

彼ら(野犬)は現地の人は絶対に襲わないんですよ。
人を襲うことが目的ではなくて、縄張りからよそ者を排除することが目的なんでしょうね。

――海外のホテルには、中には文明が発達していなかったりインフラが普及していなところもありますよね。佐藤さんはカメラや充電器などどうしても文明の機器を持っていく必要があると思うのですが、電源とかはどうしていますか?

電源がこれからしばらくないというときは、カメラだったらバッテリーをたくさん持っていくし予備電源も持参します。あとは撮り方も変える。
意外と何とかなるものですよ。さすがに2週間電気がないということは今までないですから。
でも、そういうことばかり気にするのが途中からバカバカしくなって、あまり電化製品を使わなくなることはあります。
一応パソコンとか持っていくんですが、だんだんあほらしくなって使わなくなりますね。

――通信機器は持って行かないんですか?

使える国には持って行きますが、通信機器が無いなら無いでもなんとかなります。
Wi-Fiとか電波が無くなって焦るのって、せいぜい1、2日。3日くらいその状況で電波が無いことに慣れてくるとメールも気にならなくなります。

――では、旅に欠かせないもの、絶対に持っていくものはありますか?

それが本当にあまりないんですよ。逆にそういうものを無くしたいんですよね。
「これがないから行けない」ってなるのが嫌で。ものによって行動を制限されたくないというか。
例えば、今この取材が終わって中国で面白いことが起こっているって言われたらすぐに行きたい。「あれを取りに一回家に戻らなきゃ」というのをしたくないんです。最悪必要なカメラさえ最寄の家電量販店か現地で買えばいいしというスタンスですね。

――なるべく汎用品で済ませられるようにということですか?

そうです。逆に、日本でものや服を買うときも「このままアフリカに行けるか、海外に行けるか」を考えて買ったり。かといって東京にいても違和感ないものを選びますけどね。
どこに行くにも普段の服で行けるようにしたいんです。「海外だから」「日本だから」という行動の差をなくしたいんですよね。

――これから夏休みや連休で旅行シーズンになりますが、佐藤さんがおすすめする国や場所はありますか?

あまり旅に慣れていない人や初めて海外に行く人なら、台湾がおすすめですね。でもアジアはどこに行ってもきっと楽しいですよ。
バカンスというとヨーロッパやアメリカ、ハワイあたりに行く人が多いと思うんですが、アジアもなかなか面白いので行ってみてほしいです。

――佐藤さんが有名な観光地や定番のスポットに行くこともあるんですか?

旅の途中、近くまで行ったら寄ることもありますが…中国は10回以上行っていますが未だに万里の長城なんかはちゃんと見たことないです。
全然興味が無いわけではないですが、単純に他に見るものが多すぎて、時間が無い。だからよほど余裕がないとそういうところはあまり行かないですね。

――佐藤さん自身がテレビに出演されたり、作品がメディアに取り上げられたりしていますが、メディアの反響は大きいですか?

そうですね。これまでとは違う層の方がイベントに来ることが増えました。
これまでは旅行が好きな人やバックパッカーなど、自分の想定できるファンの方が多かったんですが、最近では高校生とかファミリーがイベントに来てくれることもあり、ファンの方が増えたのは実感しています。

「そこに奇妙なものがあるから」。旅の理由はそれだけで十分

“奇妙なもの”を求めて世界中を飛び回る写真家・佐藤健寿氏。かなりのこだわりを持った“奇妙な”人なのかと緊張しましたが、フランクで素敵な方でした。でもどこかミステリアスな一面もあり、自然と彼の世界観に惹き込まれてしまう魅力も。
彼の作品を通じて、これまで見たことのない新たな世界への扉が開かれた方も多いのでは。
観光地を巡る、おいしいものを食べる、奇妙なものを見に行く――旅の目的は十人十色。
この夏、いつもと違う目的を持って旅先を決めてみるのはいかがでしょうか。

そして今回インタビューさせていただいた佐藤さん、ありがとうございました!

取材:編集長 三矢晃平/ 文:カネコ/ 撮影:堅田ひとみ

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